Berkeley

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黄昏の帝国で 6 アメリカのマネー

2008年10月02日09:47

アメリカへの留学経験のある方は皆ご存じだと思いますが、ここはすべて主な支払は、小切手かカードです。家賃や大きなお金は、すべて小切手で支払います。写真は小切手です。

こちらには日本の通帳のようなものはなく、小切手をいくら切ったか、自分でメモをしておかなければなりません。だからそのための手書きの「手帳」はあります。(親切に小切手がカーボン紙になっているものもあります。)

ほとんどの人は、インターネットでお金の出し入れをします。今checking account にいくらあって、savings account にいくらあるのか、自分でいつもネットでチェックしておかなければなりません。(たまあに、銀行からお知らせは来るようですが。)というか、日本に比べ て、いったい自分が今どれだけの貯金があるのか、<実体的に>確認する手段がまるでありません。

今日、銀行に行って、支払いのために savings から check にお金を移したのですが、窓口に行って、「check にお金を移すのをお願いします!」と言ったら、「いくらですか?」「はい、○○××ドルです」。すると彼女は、すぐにパソコンをカチャカチャといじって、 「はい終わりました」とのこと。…「え?もう終わり?」

窓口のおねえさんが端末をちょこっといじって、ハイ終わり。本当にだいじょうぶなのでしょうか。結構大金なのに。その確たる「証明」は、ちいさな ピラピラのレシートのようなものを渡されただけでした。口頭で「○○××ドル」と言っただけで、書類も何も書きません。これだと、コンピューターに詳しい 誰かが本気になれば、どんなお金であろうと、右から左へと自由に動かせるはずです。庶民の貯金なんて、キーボードのタッチミスで、一瞬のうちに消えてしま うでしょう。

つまり、ここでのマネーは、「観念」です。「実体」ではありません。

だからこそ、車のローンもちゃんと払えない人が、平気でものすごい家を買ってローンを組むことができても、誰もおかしいとは思わなかったわけです。「観念」ですから。

今、サブプライムから始まった経済の混乱でアメリカは大騒ぎですが、そもそも、「実体感覚」に基づかない経済文化そのものに病の根がある気がします。労働や実物から完全にマネーが遊離している。そんな印象を強く受けます。

ぼくの人生経験では、お金は記号や観念ではありません。その背後に、人間の労働があります。もちろん、日本の銀行でも、マネー自体はもはや「観 念」なのですが、庶民が、月にいくらかずつ、子どもの将来のために積み立てて、一口ごとにハンコをもらい、その通帳をタンスにしっかりしまっておく、とい うのがアナログ人間にとっての観念化の限界なのです。

空恐ろしいところに来てしまった、と田舎者のぼくは思います。