Berkeley

2008

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分裂経験

2008年11月13日16:31

今日の一日。

●AM 9:00起床。シャワーを浴びて、朝食をとり、メールをチェック。

●郵便局に寄って手紙を出し、12:00からの研究会に参加。
(タイトル「平和主義・シオニズム・核武装――アルーバート・アインシュタインの両義的な政治」by Ofer Ashkenazi)
……これは面白かった。少人数(10人足らず)で、アットホームな雰囲気。コーヒーも美味しかった。20世紀の危機の政治思想としてのアインシュタインの再評価。講師はヘブライ大学のドイツ史家。

●図書館で本の収集 PM 2:00~3:30
……専門書も含め、いわばすべて「開架式」で、学生に開かれていることに感心する。運営も、ほぼすべて学生のアルバイトなのではないか。そうすれば、経費も節減できるな、と思う。10冊ほど借りる。

●研究室で原稿の最終校正と出版社への送付 3:30~5:00
……ここの研究所のスタッフは皆明るい。FAXひとつ送るのも、楽しく会話。皆忙しそうだが、余裕がある。こういう笑顔や会話は仕事場が明るくなるな、と思う。

●買い物をして(チョコクッキーを買って)帰宅 5:30
……ここのレジでも楽しく冗談。店員も明るい。

と、そこまではよかった。

それから帰ってみると、日本の某出版社からメール(上記の出版社とは異なる)。先日出した校正原稿で、ぼくが元号を全部消して西暦だけにしたの を、元号を復活せよという。わがままを言うのは先生だけだと言わんばかりのメール。「シリーズもので、全部統一の形式がある。とにかく売れるためには12 月頭に出版したいので、今さら見直しは不可能。ご了承ください」(言うことをきけ)。ということで、ぼくも売り言葉に買い言葉、「天皇制に依拠する現在の 元号について、もしこの歴史シリーズがそういう立場であるとするならば(編者の顔ぶれからは信じ難いが)、私の力ではもう何もできません」(強引にするな らそうしてみろ)と返信。

出版業界も、大変なのはわかりますが、どこもかしこも余裕がなくお金の論理ばかり。「歴史の本をつくるというのはそもそもどういうことか」、その編集者はもう考える余裕がないのでしょう。

と、思いきや、日本のニュース。麻生総理は、オバマが決まった時に、「でも1月までブッシュでしょ」と言ったとか、今国会では、2兆円のつかみ金で、次の選挙対策に国民一人ずつに1万円前後の金をばらまくとかなんとか…。

えっ? 今世界は次の時代に向けて準備を始めているのに。その胎動が世界中から聞こえてくるというのに、日本の政治がすることって…。つかみ金を ばらまく? そんな、田舎の下品なオヤジたちがやるレベルの手法を、21世紀の今、政府が全国レベルでやるというの? 権力に骨の髄までなめられている国 民は、何の感情もわかないの?

こちらの報道では、さびしいことに、最近ほとんどまったく日本の記事が登場しませんが、そもそも記事にできるような意味ある内容がないのではないか。そういう気もしてきました。

正直言えば、同僚のメールを見ても、日本からの知らせをきいても、日本人は皆、必要以上に多忙です。そしてそうであるにもかかわらず、いちばん大 事なことに目隠しをされているレミングの集団のように見えます。まず、社会全体に「希望」がない。だから目先の1万円のためにだけ四苦八苦している。そう いう風に見えます。しかしそういう「外側の住人」の声は、「内側の住人」には届かない。

日本を離れてここにいると、どんどん日本が遠くなっていくようです。おかしいのは、自分なのか、自分の国なのか、わからなくなります。おそらく両方なのでしょう。

そういえば、ここに来る前、ある政治社会学者のK先生から、「あそこはいい所だから、あんまり長くいると、向こうの住人になっちゃうよ」と冗談まじりに注意されたことがあります。

物事をゆっくり深く考える。問題の根源にまでもどって、あらゆる問いを開いておく。そういう「心の習慣」にだんだんと慣れ親しんでくると、あの新 潟の地震の時のように、しばしば世界が揺れて見えます。余震が続くと、揺れているのは大地なのか、自分なのかが分からなくなる時があったのですが、そうい う気持の悪い不安定な状態になります。

分裂経験。留学経験者はみんなあるのかもしれませんが、世界と自分とのノリが違う。いつもズレる。それはけっこうしんどいことなんです。

それにしても、日本、どうなっているんだ! と思います。