Berkeley
日本に置いてきた息子は小学校5年生で、そろそろ何か精神的に夢中になるものがないものかと、親として離れている分、いつもアレコレ心配し、こちらの写真 を送ったり、スカイプで面白い話をきかせたりして、カマをかけたりするのです。自分が小学校5年生のころは、それこそ、力の限り、いたずらに精を出し、図 書館の本も片端から読んで、とにかく夢にあふれていた頃でした。
しかし、いつも、「あ~」とか「う~ん」とか、気のない返事をし、息子との対話は空振りに終わります。言外に「時代が違うんだよなあ」とか「お父 さんとノリが違うんだよな」という感じです。まあ、生まれてからずっと、そういう感じの子だったのですが。最近、江戸川乱歩を夢中に読むようになったと妻 からきいて、少しは安心したりしていました。
今日もスカイプで、「こっちにはアジア美術館というのがあって、写真を送っておいたよ。お前も前からそういうの好きだったろ。小さい頃、土器の前 でずっと動かず見ていたよな。こっちには紀元前からの仏像がいろいろある。きっと面白いからお母さんに解説付きで見せてもらいなさい」、などと教育モー ド。
するといつものようにボーっときいていた息子は、間をおいてめずらしく質問。
子「ねえ、お父さんって、夕ごはん何食べてるの?」
父「えっ?うん、まあ、玄米ご飯とか、健康にいいものばかりだよ。今日は、買物に行ってビーフステーキを焼いて食ったぞ」
子「あっ、そう。」
父「……」
その後すぐに気がついたのですが、息子は、とにかくぼくが毎日何を食べているのか、ひもじくしていないか、前に高かった血圧はどうなっているのか、それをいちばんに心配しているようなのでした。
チャンチャン。
よく中学生になると、キャッチボールをしていてお父さんの球が急に遅く感じた時にお父さんが小さく見えるというのがありますが、もう彼にはぼくは小さく映っているのかもしれません。
ぼくが自分の事だけにかまけている間に、子どもはいつの間にか大きくなっていた。親が子どもみたいだからなあ。
まあ、嬉しい出来事だったので、忘れないように書き記しておこうと思います。