Berkeley

2009

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息をのむ美しさ(レイク・タホとヨセミテ)

2009年07月12日08:14

労働者国際連帯会議の後は、次の日からすぐに「レイク・タホ」と「ヨセミテ」にドライブ旅行でした。疲労が極度にたまった上での運転だったのでちょっと心配でしたが、何とか無事もどってきました。

写真は、左が「レイク・タホ(タホ湖)」。右が「ヨセミテ国立公園」のエルキャピタン。名前でも分かるように、先住民族のことばがそのまま使われ ています。この地域一帯に住んでいた先住民たちの豊かな生き方を想像しながらの旅でした。なんと、途中で野生の小熊にも遭遇しました。

レイク・タホは、その深さ(全米2位)や水の透明度でも世界的に有名ですし、ヨセミテは1984年に世界遺産に登録されました。どちらの場所でも、その眼前に広がる大きさといい、そのコバルト色の輝きといい、まさに息をのむような美しさと出会うことができました。

少々無理をしても、行ってよかったです。
特にヨセミテは、きっとまた行きたいと思いました。





映画「悦楽」と「愛の亡霊」を観る

2009年07月12日16:01

今日の大島映画は、「悦楽」(1965年)と「愛の亡霊」(1978年)でした。

どちらも力のあるいい作品でした。特に後者は大島作品の中でベストかもしれないと思います。

「悦楽」は、心から愛する人のために殺人を引き受け、しかもその女性とは結ばれず、その代償として、莫大なお金で刹那的に何人かの女性を囲い続 け、最後にはその真の「愛」のために自死までを決意する、しかし最後には、まさにその最愛の人に簡単に裏切られてしまうという可哀想な男の話です。それは まさに、当時の経済成長という狂乱の日本社会への批判となっています。主人公は、当時のお金で3千万円を1年で使いきって死ぬという決断をするのですが、 その彼が享受する「夢のような」生活こそ、当時の日本人があこがれた空っぽの幻想にほかなりません。

「愛の亡霊」の舞台は、1895年、明治が始まったばかりの寒村です。貧しい車引きの家の女房が、年下の軍隊上がりの若者と禁断の恋に落ちます。 貧しさと封建制、厳しい村の生活から逃れるように、二人の恋は燃え上がるのですが、ついに二人は共謀してその主人を殺し、遺体を古井戸の中に捨ててしま う。

映画はそこからが興味深いのですが、女房は毎晩その車引きの幽霊に悩まされます。ドストエフスキーの「罪と罰」ではありませんが、前近代社会で真 の「正義」を担うのは、「幽霊」です。女房は、村人の噂によって苦しめられるだけでなく、まずその亡霊によって心身ともに憔悴し、罰せられる。犯行を提案 した確信犯の若い男は、(だからこそ)幽霊こそあまり見ないものの、今度は明治新政府の巡査によって追い詰められていきます。「文明開化」の時代ですか ら、以前のように容疑だけでは逮捕できず、巡査は証拠をつかむために奔走します。

最後は逃れようもなく、二人の関係が官憲にも明々白日となり、公開の場で二人に拷問がなされ、殺害を自白した二人は死刑になるという筋書きです。 弱者同士の「愛」が、さまざまな権力によって包囲され、潰え去るという図式は、大島作品の基本的な構図です。車屋の主人は気の毒ですが、彼を殺した二人は 彼の亡霊と近代刑法の両者によって完璧に罰せられます。また、彼ら二人を拷問にかけた当の巡査たちもまさに「命がけで」そうせざるをえない弱い立場にある わけで、その背後に大きな権力の影が浮かび上がってきます。

似た作品である「愛のコリーダ」(1976年)のほうが有名ですが、テーマの広がりから言っても、「愛の亡霊」のほうが格段に上等な作品だと思い ます。古井戸のメタファーから喚起されるような、まるで民衆の愛と権力の真実の歴史が、日本史の地の底から浮かび上がってくるような鮮烈な印象を受けまし た。