Berkeley
今、サンフランシスコ国際映画祭(4月23日~5月7日)の真っ最中です。
最近結構忙しくなり、映画を観る時間もなかなかとれないので、近くの大学映画館(PFA)で観られるもので、比較的面白そうなものを選んで観に行くことにしました。
今日観たのは「Khamsa」(2008年)という映画です。「ハムサ」と発音するようです。アラビア語で「5」の意味。カリム・ドリディ(Karim Dridi)というチュニジア生まれのフランス人監督によるものです。
テーマは、マルセイユ郊外に住む「ジプシー」(ロマ)の少年の「生」の現実。13歳のマルコは、親の保護も受けられず、唯一かわいがってもらって いたおばあさんも死んでしまう。犯罪に走る友人たちと不本意ながら行動を共にする中で、次第に逃れられない苦境に陥ってゆくという話です。それでも逃げ続 けるマルコ。いったい彼は、何から逃げ続けるのか…。最後のシーンは走って逃げる彼の心臓の「鼓動」で終わります。
率直に言えば、ロマの人たちの生活や悲惨の描き方が少しステレオタイプかな、という気がしましたが、映像の悲しさと美しさ、そしてあくまでも彼ら に寄り添おうとする作品の姿勢には力を感じました。闘鶏のシーンや火渡りのシーン、埠頭に突き出たクレーンから海に飛び込むシーンなど、印象深いショット がたくさんありました。
以前観た、エミール・クストリッツァの「ジプシーのとき」という映画も思い出しました。そしてその哀しい歌々の音色も…。
ぼくはなぜだか「ロマ」に魅かれます。理由はわかりません。ナチスがユダヤ人とともに「劣等人種」として強制収容所に送った人々。あの「フラメンコ」の原型をつくりだした人々。しかし、理由はそれだけではないような気がします。
今回の作品を選んだのも、ロマを描いた映画だったということが大きかったと思います。それだけで胸が震えたのです。