Berkeley
眠れないので、日記を書きます。
ぼくはギターが弾けません。
まず貧乏だったので、そんな高価なものは友だちのようには買えませんでしたし、根気がないので、友だちのを借りて少し練習したとしても、すぐに指が痛くなって挫折するのでした。
でも40を過ぎて独り暮らしをしていて、ふと、自分の胸の内を一番にかきむしる音は、クラシック・ギターやフォーク・ギターの乾いた音だということに気がつきました。孤独をもてあますような、でも限りなくやさしいその音は、ぼくの中心にある何かを動かします。
ぼくはお酒が飲めず、煙草も吸わないのですが、コーヒーが大好きで、ギターの音色は、そのコーヒーのような、しかもその中でも一等香りの高い逸品のような、透明な高まりをぼくに与えてくれます。
初めていとこの家でこっそりギターを鳴らした時の、部屋中にあの音が響いた時の、あの自分の内面が発露してしまったかのような、驚きと感動は忘れられません。
でも、未だにぼくはギターがひけません。しかも、ギターをもっていません。買おうかな。買って練習しようかな。
独りで眠れない時には(恥ずかしい事に)、このようにまるで中学生のメンタリティに退行している自分にはっと気がついたりします。ギターは、ぼくの中では、勝手に「中学生的なもの」に位置づけられているのですが、永遠のあこがれ、果たされない原点です。