Berkeley
この5日間は、サンフランシスコで開催された、「国際労働者連帯会議」にボランティアで参加し、いつの間にか通訳を任され、かなり消耗したのですが、得るものも大きかったです。
この会議は、1934年7月の有名なサンフランシスコ・ゼネストの75周年を記念して開かれました。日本・アメリカ・韓国・トルコ・ブラジル・ フィリピン・イタリアの7カ国の労働運動、特にもっとも先鋭的な労働運動の代表が一堂に会しました。「先鋭的」というのは、体制にすり寄ってしまう既存の 労働組合のあり方を批判し、社会の最底辺に焦点を当てたラジカルな活動を展開しているという意味です。しかし逆に彼らは、どの国でも「少数派」であるわけ で、またそうであるからこそ、国境を越えた連帯が必要だということです。
重要な事は三つあったと思います。
まず、どの国の労働者も極めて厳しい人権侵害状況にあるということが報告されました。基本的な労働保険や社会保障などはどの国でも軒並み崩壊して おり、未組織労働者や契約社員、移民などのさらに弱い立場の人々にとってはきわめて深刻な状況をもたらしていることが明らかとなりました。一方、既存の労 働組合は(Yellow Unionと言っていましたが)、これら末端の労働者(ランク・アンド・ファイル)のむしろ敵として立ちはだかっているということです。
第二に、どの国においても深刻な経済問題に、戦争をはじめとする政治問題が密接にリンクしているということが報告されました。それゆえ、労働組合 運動(Unionism)は、賃金問題や階級問題のみならず、国家によるあらゆる戦争にも反対しなければならないということが確認されていました。
そして最後に、国際的連帯の重要性が確認されました。きわめて困難な状況の中で、孤立化している運動が相互に手を結ぶことで希望が見えてくるので はないか、ということです。たとえば、雇用主が海外企業のGMであるブラジルなどでは、国内における抵抗にも限界があるわけです。
しかし、「国際連帯」は、「言うは易し行うは難し」です。まずは言葉の問題。そして、各国の運動の歴史や事情の相違、人材不足などなど、問題は山 積みだと感じました。結論として、参加者に国際会議の経験が不足していたため、必ずしもいい会議が実現できたとは思えませんでした。そして何よりも、会場 に若い人が少ないことに不安を感じました。辛辣に言えば、会議は「オールド・レフティ」たちの同窓会であったと言えなくもありません。最後に皆でインター ナショナルを歌うのですが、正直に言えば、それがさらに私が感じた哀しさを倍増させました。
ただ、アメリカ労働運動の層の厚さというか、伝統を感じることも多くありました。いざとなったら、力を貸す仲間が縦横無尽にネットワークされてい るようでした。今回は豪華ゲストも多く登壇したのですが、写真は、イラク反戦運動で有名なシンディ・シーハン(Cindy Sheehan)さんです。このほか会場には、アフリカ系アメリカ人としては史上二番目の最高裁判事を務めたクラレンス・トーマス(Clarence Thomas)さんもいらっしゃっていました。
今回は、まず初めの一歩というところだったと思います。