本学と新潟市が連携協定を締結
本学と新潟市は、新潟市内のSDGs達成に向けた市民意識の向上や行動変容の促進を目的とし、2022(令和4)年9月29日に連携協定を締結しました。連携事業では、「SDGs普及啓発」、「食品ロスに関する支援」などの活動を実施することとしています。
連携協定締結式には、本学からは越智学長、山田准教授、国際学部学生6名が出席しました。新潟市からは中原八一新潟市長、三富新潟市理事・政策企画部長がご出席されました。締結式では、本学からは越智学長、SDGs活動で豊富な実績のある山田准教授の挨拶の後、日ごろからSDGsを学び・実践している学生を代表して国際学部4年星野さんと小池さんから「これまでの経験を活かしながら、SDGsネイティブでもあるZ世代らしい、新しく斬新な発想で新潟の今と未来に貢献していきたい」と取り組みに向けての力強い決意表明がありました。それに対して中原市長からは活動への期待が示されました。
締結された連携協定書を掲げる中原新潟市長と越智学長
連携協定締結式に参加した学生も加わり、記念写真撮影
連携協定第一弾は、食品ロス削減の取組みに
2022(令和4 )年11月1日に、本学関係者と新潟市関係者の間で打ち合わせを実施し、連携協定に基づく第一回目は食品ロス削減についての取組みとなりました。具体的な活動としては、これまで活用されてこなかった規格外野菜(古米、規格外などの理由で市場に出回らない野菜)などを、小売店や農家、家庭菜園から回収拠点へ持ち寄ってもらい、それをこども食堂に寄付するという流れとなります。初めての取組みであることから、周辺自治体の事例を参考にし具現化した「実証事業」として実施することとなりました。
事業実施の背景
打合せでは、事業推進に際し課題について話し合われました。課題の一つは、食品ロスの削減です。食品ロスの削減は、参加者一同共通の問題意識を持っておりました。この取組みを通じて得られたノウハウを、本学だけでなく新潟市内各所へ横展開することにより、さらなる食品ロス削減を達成したいという思いも確認しました。しかし、もう一つ課題として挙げられた「こども食堂への支援」については、そもそも「こども食堂」とは何か、ということも含めて、本学学生から前向きな質問がありました。
本学国際交流センターにて開催された連携事業における打合せ
こども食堂とフレッシュフードシェア
「こども食堂」とは、親子や、またはこども1人でも安心して訪れることができる無料、あるいは安い参加費で食事が提供される居場所の呼び名です。新潟市内では、こども食堂が50カ所程あり、その運営はボランティアだけでなく地域の様々な立場の大人たちが参加して成り立っています。
現代の日本は、家族が夜遅くまで働かなくてはならなかったり、経済状況が厳しい等により、家族で食卓を囲み、バランスの取れた多様な食物を食べる食事ができない家庭もあるようです。その体験を目指して活動しているのが、こども食堂です。
フレッシュフードシェア活動の一つに、これまで活用されていなかった規格外野菜や余っている野菜等を廃棄してしまうのではなく、それをこども食堂で活用してもらう、というのがあります。この循環を生み出すための活動、それはまさにSDGsの活動です。
場所は、本学本校の雪冷房施設(雪室)と新潟中央キャンパスに決定
場所は、本学2か所で実施しました。田畑が広がる新潟市西区の本校(みずき野キャンパス)と、新潟市中心部の新潟中央キャンパスです。【実施報告はこちら】
本校(みずき野キャンパス)の立地は、地元農家と隣り合わせです。一方、新潟中央キャンパスは、新潟市が進めている「にいがた2km」の都心軸エリアに面していて、周囲はオフィスビルや商業施設などがあり交通の便も良い場所です。
本学における2か所での開催は、立地条件が明確に異なることから様々な観点からのデータが取れることが期待され、実証実験の実施地としてとても有効であると考えています。
また、この取組みにより、後述するような効果も期待されています。本校は、地元農家さんが近くにいらっしゃるため、野菜を持参いただく際の車やトラック等の燃料が少なく済み、結果的にCO2削減につながることが期待される点です。新潟中央キャンパスは、こども食堂からの距離が比較的近いこともあり、こちらも野菜を取りに来られる際の車やトラック等の燃料が少なく済み、CO2削減につながります。
なお、本校の実施拠点「雪冷房施設(雪室)」は、写真のとおり大きな倉庫です。この施設は、降雪時に大駐車場の雪を格納し、初夏~夏にかけて、雪室内の雪で冷やされた冷気を本校の冷房に活かす施設です。フレッシュフードシェア事業においては、この雪室を活用し(安全面の観点から雪格納時期以外は)野菜の寄付受付とその一次格納場所として利用します。
食品ロスの削減は、SDGsの推進にもつながります。本学では、SDGsの目標「1、2、3、11、12、17」を想定し、取組んでいます。
雪室内の様子
(雪なし時における受付の様子)
雪室内の様子(雪格納時)
いよいよ実施。想像以上の野菜等が集まる
フレッシュフードシェア事業は、本学にとっても初めての試みでした。そのため、どのくらいの寄付が来るのか、他市の例を参考に計画する必要がありました。一例として、長野県のある市では、1回あたり約80kgの寄付が継続してあったとのことで、これを基準に進めていくこととしました。
初の実証実験は、令和4(2022)年12月7・8・9日の3日間に渡り実施しました。【実施報告はこちら】
寄付受付は、そのうち2日間(12月7・8日)に実施され、2拠点合計で合計811.1kgものコメ・野菜等が集まりました。12月9日に、全量こども食堂へ寄付しました。
1回あたり80kg程度の量を想定していましたが、それを大きく上回り、2日間・2拠点で合計800kg以上も集まりました。畑の場所、お住まいの場所を伺うと、新潟市西区、中央区だけではなく新潟市全域から広く来ていただけたようです。受付を担当していた新潟市担当職員、本学教職員、学生一同、本事業がなければこれらが廃棄されていたかもしれないと想像すると、たいへん意義のある事業であると強く感じました。
受付した主なもの
・みずき野キャンパス(新潟市西区)
お米、野菜(カブ、大根、白菜、ネギ、さつま芋、他)
・新潟中央キャンパス(新潟市中央区)
お米、野菜(大根、キャベツ、カリフラワー、チンゲン菜、他)
今後の展開について
新潟市では、令和5年度以降に新潟市内全域に展開していけるよう計画していくとのことです。本学では、SDGsを推進していくためにも、今後も協力していければと考えています。
本学のキャッチコピーは、「つなぐ つなげる つながる」です。フレッシュフードシェアの取組みは、農家さんとこども食堂とをつなぎ、結果として食品ロスを削減できるものです。本学ではフレッシュフードシェア寄付拠点の運営を通したSDGs実践の場、学生の学びの場として捉えております。以上の取組みは、まさに本学のキャッチコピーと合致します。この取組みを通して、農家さん等とこども食堂への橋渡し役として、“人と人とのつながり”が生まれることを、本学では期待しています。
学生の声
上田 綾 国際学部 国際文化学科
今回のフレッシュフードシェア事業への参加を通して、食品ロスの問題をより自分事として捉えられるようになりました。市場に出回らない野菜の量に驚くとともに、1つ1つの食材に価値があり、食材の大切さを感じることができました。市場に出回らない食材の量を知ったことで、食品ロス問題をもっと考えようと思うきっかけになり、かつSDGsは私たちの生活と密接に関わりうるということを再認識できる、貴重な機会になりました。
長島 朋花 国際学部 国際文化学科
今回の取り組みで集まった食材は、想像をはるかに超える量で驚きました。段ボールいっぱいの野菜を持ってきた方も、ビニール袋で持ってきた方もいらっしゃいました。私は、食材の量ではなく、行動に移してくださったことが大切だと感じました。こども食堂さんのように、食材を必要とする人は他にも沢山いると思います。食材は、廃棄されることなく、必要とする人の手に届いてほしいです。このような取り組みがもっと広がっていくことを願い、自分自身も行動を起こしていきたいと思います。