Lecture担当講義
国際組織論(3年前期選択専門科目)
授業目的
現在、「国際関係」は必ずしも単なる「国家間関係」ではない。 それゆえ近年、従来の国家中心の国際関係論を補うべく、国際組織(国際機構)論が誕生し、 国連やNATOのような政府間国際組織(IGO)や国際的環境運動などの非政府間国際組織(INGO)が 国際関係の重要なアクター(行為主体)として分析されるようになった。
ただ本講義では、これら無数の国際組織を単に法的・制度的にばらばらに理解するのではなく、 世界で生起するダイナミックな政治現象の統一的文脈の中でとらえなおしてみたい。つまり、近代国家を横断する多様なアクター(行為主体)が重層的に織りなす 「世界政治(global politics)」の視点から見た動的な国際組織論を目指す。
各回毎の授業内容
本講義では、単に「グローバル・ガヴァナンス(世界統治)」(世界の問題をいかにうまく管理・解決するか)の視点ではなく、 特に「グローバル・デモクラシー(世界民主主義)」(世界の問題をいかに民主的に解決するか)の視点から 多層化した国際的行為主体のあり方を考えてみたい。その際、できるだけ具体的な事例を検討する中から理論や概念を洗練できるよう努める。 細目は限定しないが、以下の内容には触れる予定である。
- 国際組織とは何か
- 国際政治学における機能主義・相互依存モデルの展開
- 「グローバリゼーション」と政治の重層化
- 「グローバル・ガヴァナンス」と「グローバル・デモクラシー」
- 地域主義と国際組織
- 世界政治と国際連合
- 安全保障問題と国際組織
- 国際NGOを考える
- 21世紀の世界秩序
成績評価方法
しばしば講義の最後に、コメントカード(質問やコメント、感想を書いてもらう)を作成してもらい、 それらは講義の改善に役立てるだけでなく、受講者の参加姿勢を見る材料とする。基本的に最終筆記試験の成績によりすべての評価を決定し、出席も重視しないが、このコメントカードの内容は成績に加味する。 つまり、試験当日万一やむをえない事情で十分解答できなくとも、日常的な参加姿勢は成績に加味される。また、試験は、個別的な知識よりはそれをもとにした思考力(学期中にどれだけ考えたか)を重視した問題を出題する。
教科書・参考文献
教科書は、デヴィッド・ヘルド『デモクラシーと世界秩序』(NTT出版)。また、授業中、それぞれのサブテーマに即して随時参考図書を指定するので、参加者各自で思考を深めておいてほしい。 読参考文献として、小林誠・遠藤誠治編『グローバル・ポリティクス』(有信堂)、最上敏樹『国際機構論(第二版)』(東京大学出版会)を挙げておく。 この他の参考文献の具体例としては、『AERA Mook 新国際関係学がわかる』(朝日新聞社)の中の「ブックガイド」を参照のこと。
受講にあたっての注意事項
内容的にかなり高度なことも含むので、知的好奇心が旺盛な学生の参加を望む。 また、2年次に「平和学」を受講していることが望ましい。