Lecture担当講義
東アジア関係論(3年後期選択専門科目)
授業目的
本科目は、「環日本海交流論」とともに、東アジアの各国地域・歴史研究を横断的に理解する知的枠組みを模索する。「環日本海交流論」が<海>をめぐる自治体や市民の交流史に重きを置くとすれば、「東アジア関係論」では、東アジア国際政治史などのより高次な次元をも含むより包括的な視点に基づく。概して、「東アジア」の歴史は、暴力とディスコミュニケーションに彩られた不幸なものであったということができるかもしれないが、近年、主に経済分野で多くの協力関係が模索され、「東アジア共同体」構想も浮上してきた。歴史認識問題や冷戦期米国の東アジア政策、核問題など、「東アジア」に根雪のように残る障害をしっかり見つめると同時に、新たな地域主義や地域協力の胎動も確実にききとげたい。本講の最終的な目的は、「東アジア<共生>の条件」がどこにあるのかを探ることにある。揺れ動く東アジア情勢の中で、一人の市民としてそれをどう理解し、行動するべきなのか、具体的な素材を通じ考えたい。
各回毎の授業内容
新鮮な題材を多く取り入れたいため細目は限定しないが、以下の内容には触れる予定である。
- 「東アジア」とは何か ―― 歴史編 [1回]
- 「東アジア」とは何か ―― 理論編 [1回]
- 歴史認識問題と「東アジア」 [2回]
- 分断国家と「東アジア」 [2回]
- アメリカと「東アジア」 [2回]
- リスク共同体としての「東アジア」 [1回]
- エネルギー問題と「東アジア」 [1回]
- 経済共同体としての「東アジア」 [1回]
- 「東アジア」共生のために [3回]
※+1回分は、資料映像の鑑賞に充てる。
成績評価方法
しばしば講義の最後に、コメントカード(質問やコメント、感想を書いてもらう)を作成してもらい、それらは講義の改善に役立てるだけでなく、受講者の参加姿勢を見る材料とする。基本的に最終筆記試験の成績によりすべての評価を決定し、出席も重視しないが、このコメントカードの内容は成績に加味する。また、試験は、個別的な知識よりはそれをもとにした思考力(学期中にどれだけ考えたか)を重視した問題を出題する。
教科書・参考文献
教科書 佐々木寛編『東アジア<共生>の条件』(世織書房)
参考書は、授業中、それぞれのサブテーマに即して随時指定する。必読参考文献の一例として、五十嵐暁郎・佐々木寛・高原明生編『東アジア安全保障の新展開』(明石書店)を挙げておく。
受講にあたっての注意事項
内容的に高度なものも含むので、知的好奇心が高い学生を望む。ロ・中・韓・米各地域・歴史研究の基礎的な知識が前提となる。「平和学」「国際組織論」をすでに受講していることが望ましい。