II DE2026NUSCAMPUSGU79学長挨拶大学ってなんだろうと思うことが多々あります。さらに正直にいうと「そんなことを考えても答えはない」という結論にしか行き着かないということもわかっているつもりです。でも大学はそういうことを考えつづけるための場所だとも思います。というのも答えが簡単に見つかる問題などは本来の意味での問題ではないからです。答えが簡単に出ないからこそ、みんなで考えているわけです。ですから教員、職員、学生などいろんな人が一緒にものを考えている大学という場所は、答えの出ないことがわかりきっている問題に対して、答えを見つけようとしている永遠の場所ともいえます。それは社会からすると「何やってんの」と言いたい状態かもしれません。しかし大学はそういう疑念に対して「じゃあ大学の外はまともですか」と開き直ります。本来、社会のなかで人間は生きるために働いているはずです。しかし現実を見ると職場での労働によって自分が生き苦しくなっていることも、残念ながら珍しいことではありません。また人間は自分らしく生きるためにいろいろな選択をしているはずなのに、それらの選択を強制されるなかで自分を見失いそうになることも、多くの人たちが体験していることです。社会ではこのように本来あるべき姿が逆転することがよく起こります。しかし本当の問題はそうしたことが起きること自体ではなくて、それらが起きていることに気づかないことです。独自の視点から社会を研究してきたマルクスやヴェーバーらの先人が抱え込んだ問題もこういう点に関連しているように思います。これらの問題を考えることが勉強ということであり、そのための場所が大学なのでしょう。だとすれば、そんな場所で学生が勉強を嫌いになったりすると、それは大学としても本末転倒だということになります。そうならないための方法について一緒に考えましょう。新潟国際情報大学 学長 越智敏夫本末転倒な社会、本末転倒な大学
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