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 学び、考え、判断して     たじろがずに生きよう今春、みずき野から巣立ってゆく卒業生は、情報文化学科111名、情報システム学科175名、合計情報文化学部286名です。皆さんの多くは明日からはそれぞれが選 んだ企業等で社会人としての人生をスタートするわけです。実社会では大学時代とは違う多くの困難にぶつかることでしょう。プロとして仕事をして報酬を得るということは、それほど易しいことではありませんし、それが容易でない時代でもあります。そうした困難を克服し社会人として自立してゆくのに、大学で学んだことはすぐ役には立たないでしょう。だから、当面皆さんはまごつき悩むでしょう。しかし、本学で身に付けた学び、考え、判断し行動するという訓練は、必ず皆さんに木が育ってゆくときに地中に深く伸びて、木を支えてくれ る根のように人生で必要な栄養を送ってくれるはずです。みずき野で学んだことが次第に解決力として皆さんの生きてゆく力となってゆくでしょう。長く低迷していた日本経済も「アベノミクス」といわれるデフレ対策としての金融・財政・成長戦略政策への期待から円安・株高が進んでいます。デフレを貨幣問題として金融緩和で対応するだけで解決するのだろうか。ギリシャ問題から危機が叫ばれた欧州国家債務危機も、不思議な静けさの中で基本的解決対応がないまま、忘れ かけられているけれど大丈夫だろうか。シェールガス革命もあって米国では景気回復気配が見られているけれど、リーマンショックの原因となったマネーゲームはもう起こらないのだろうか。TPPなど自由貿易が正義という風潮の元、経済格差だけでなく貿易取引条件にまで格差を設けるのが正しいのだろうか。欧米先進資本主義国にとって代ろうとしているBRICS等の新成長国は「国家資本主義」といわれる国々だけれど、これらの国がプレゼンスを増すとき、世界のルールはどうなるのか、民主主義的に後退のリスクはないのだろうか。永年政治・経済界で生きてきて引退した私には、皆さんがこれから生きてゆく社会を時代的にみると、必ずしも安心できる平 穏な時代には見えません。そんな社会・時代を皆さんは生きてゆくのです。だからといってたじろいではいられません。よく考えれば人は昔からいつだって厳しい状況を生きてきたのです。問題の無い時代なんてありませんでした。その都度、若者は溢れんばかりの勇気を、年寄りは永年の経験による知恵を持ち寄って、助け合って乗り越えてきたのです。これからもそうやって立ち向かってゆくしかないのです。厳しい経済環境の影響で、昨年までは就職を希望しながら、未就職のまま卒業してゆかざるを得なかった卒業生が多く、そのことを遺憾としてお詫びしてきました。就職戦線は少し改善されたといわれています が、担当教職員の努力にもかかわらず本年も未就職のまま卒業を余儀なくされる卒業生がおりますことは、誠に残念なことであります。未就職の卒業生に対しましては、大学としましては卒業後も極力支援してまいりますので、引き続き密接に連絡を取ってくださるよう申し添えます。卒業される皆さんに申し上げたいことは、自分の人生の夢をいつも持って、その実現に向かってチャレンジしてほしいということです。困難に向き合ってもそれを他人のせいにせず、自らが勇気を持って立ち向かい、夢の実現に努めてほしいのです。 自分の人生は自分の足で立って、前を向いて歩んでゆくしかないからです。困難を克服した時、初めて人生の喜びが待っているのです。問題の克服に当たっては、この大学で学んだことが、考え判断し、そして行動する力となって皆さんを支えてくれるでしょう。全力を尽くした人生なら、納得もできますし、悔いもないでしょう。一度の人生です。納得のゆく人生を送ってください。そのためには、常に夢を持って青春の心でそれを全力で追い求めてください。4年前の卒業式で、卒業生に対しサミュエル・ウルマンの「青春」という詩を餞に贈りました。それは「青春とは人生の在る期間をいうのではなく、心の様相をいうのだ」というもので、青春は若い肉体に宿るのではなく、若い精神に宿るということを言っています。ですからウルマンは、詩の中で「年を重ねただけで人は老いない。理想を失うときに初めて老いる。希望ある限り若く、失望とともに老い朽ちる」と言っています。皆さんにそのことをもっと具体的に感得してもらいたいので、ヴィクトール・E・フランクルというオーストリアの精神科医の書いた「夜と霧」という本を紹介したいと思います。フランクルはユダヤ人というだけで、ナチスの強制収容所に入れられ極限状態を経験した上で、奇跡的に生還した人です。その経験を綴ったのがこの本です。ナチスの強制収容所関係の本として「アンネの日記」と並んで有名な本です。私も若い時読んで大きな感動を覚えたことを覚えていますが、昨年8月某TV局の「名著を読む」という番組で採り上げられ少し話題になりましたので、読まれた方もおられるかと思います。この本は出版されると世界中で読まれ、多くの人に感動を与え、今でも読まれるロングセラーとなりました。それはこの本が単にナチス収容所の極限体験を記録したものではなく、そこで命を失っていった多くの人の死に臨んだときのはなむけ学長式辞本日、ここに新潟国際情報大学の第16回卒業式を迎えるに当たり、まず初めに卒業生の皆さんに心から「卒業おめでとう」と祝福の言葉を贈ります。また、ご父母の皆さまにも併せてお祝い申し上げたいと思います。ご臨席いただきましたご来賓の方々には御礼申し上げます。新潟国際情報大学の役員、教職員一同を代表いたしまして皆さまに御礼とお祝い を申し上げます。卒業生の皆さんは今、卒業の喜びと4年間のたくさんの思い出で胸がいっぱいのことと思います。同時に4月からの社会人としての新たなスタートへの期待と不安もあることでしょう。4年前、皆さんは大きな希望を持って本学に入学してきました。そして4年の歳月がたちました。みずき野でのキャンパスライフはどうでしたか。恵まれた自然の中でスポーツにいそしみ、友人と友情を育み、そして先生方の温かい指導のもと勉学に励んだ大学生活は、その思い出とともに皆さんが最も輝いていた青春の尊い記念碑になるでしょう。平成24 年度    11新潟国際情報大学 学報 国際・情報 平成25年4月発行 2013年度 No.1新潟国際情報大学長平山 征夫 卒卒業業式式

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