学報102号
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理事長祝辞「飲水思源」の想いを胸に自ら発信 求めて生きよんな愚かなことをしても、それらはりっぱな後悔を生みます。だからこそ生きていけるのです。自分自身のことを言うと、僕も失敗だらけの人生です。あの頃にもどってやりなおしたいと思うこともありますが、自信を持って言えるのは、あの頃にもどったとしても絶対に同じことをまたやるだろうということです。お祝いの挨拶に先立ち、元日の能登半島地震において被災された方々に心からお見舞い申し上げますとともに、一刻も早い復興をお祈り申し上げます。本日卒業式を迎えられた、国際学部114名、経営情報学部181名の皆さん、卒業おめでとうございます。また、今日まで育て・支えてこられた御父母の皆さん、教育、学生支援にご尽力いただいた教職員の皆さんにも併せて感謝とお祝いを申し上げます。卒業生の皆さんの今の心境は如何でしょうか。やり切った満足感、充実感でしょうか。もう少し頑張れたという心残りがあるのでしょうか。そして卒業の日を迎えた喜びでしょうか。まだ少し学生でいたい、友と別れたくない寂しさでしょうか。様々な思いが走馬灯のように脳裏を駆け巡っていることでしょう。この4年間を振り返ってみると、オンライン授業からハイブリッド授業、海外留学やゼミ活動、部活動の断念等、コロナ禍による不人間、そんなに成長しません。だからこそ、うだうだと考え続けるのです。そしてさきほどから言っているように因果関係の確定はとても困難です。たとえばある学長がある大学にいて、その大学がもしひどいことになったとき、そのひどい状態はその学長のせいでそうなったと言うこともできるでしょうし、その学長がいたおかげでその自由な学生生活が最も大きな出来事だったのではないでしょうか。私自身も自分の人生の中で3年の長きに亘り命の危険を考えさせられたことは初めてでした。未だ収束したわけではなく引き続き注意する必要があります。皆さんは、いよいよ、これから実社会に踏み出します。少子高齢化、物価高、環境問題や自然災害、経済問題や金融不安等、決して安全、安心して暮らせる環境ではないかもしれません。しかし躊躇うことはありません。皆さんには4年間の学びの積み重ねがあります。取り組んできたことを思い出しながら一つひとつ乗り越えてください。そして、もう一つだけ加えさせてください。それは、自らが発信することです。実社会では、より自分の意思、考えを相手に伝えることが重要です。コミュニケーション力としてゼミナールやキャリアガイダンス等で学修したことと思います。ぜひ実践してください。私は、昔、社会に出るにあたり大先輩に「背伸びしてでも様々な人と付き合え」と言われ、また、違った先輩には「身の丈に合った人生を送れ」とも言われました。振り返ってみると、ケースによってどちらも正しいよ状態で済んでいると言うこともできるでしょう。大学が良い方向に行ったときでも議論は同様です。このように因果関係について考えるということは、本来はそうした価値判断に関わることであるというのはE・H・カーが『歴史とは何か』という本のなかで述べているとおりです。ですからみなさんはうだうだとものをうに思います。ただ、与えられたことだけをこなす日々を過ごすよりも、自ら発信し、求めて生きるほうが仕事も充実し、人生も豊かになるのは間違いがありません。昨年は日中国交正常化50年を祝う節目の年でもありました。1972年9月29日、田中角栄当時の首相が北京において周恩来当時の中国首相と日中共同声明に署名し国交正常化が実現しましたが、その際の二人の大袈裟ともいえる腕を振り回すような固い握手が強く印象に残っています。そして、「飲水思源」と田中首相に感謝と敬意を伝えました。以後中国の要人が来日すると必ず田中邸を訪れ病床を見舞ったり、亡くなった後も西山町の生家をお参りしたりと礼を欠くことがありませんでした。「飲水思源」イン・スウイ・スー・イウエンと中国語で読むようですが、水を飲むときは、その井戸を掘った人の苦労を思い感謝せよ、と言う意味から、「田中首相の日中国交正常化への労苦を忘れない」という、感謝の想いが述べられたものでした。この故事から学ぶ、「物事の基本を忘れない」、「他者からの恩を忘れない」の想いを持ち続けて新たなステージに進んでください。そして疲れたら一度立ち止まり、大学の考えながら自分自身の価値の体系を作っていくのです。そうやってとにかく生きていれば、どんどん自分の価値観も変わっていきます。しかしこの価値観の変動ということも大学が制度として目指しているものです。うだうだと生きて行ってください。死ななければ、それだけでじゅうぶんです。ご健勝を祈ります。研究室を訪ねてみてください。きっと恩師は温かく迎えてくれます。皆さんご承知の通り、新潟県には大学が、国公立大学7校、私立大学が15校あります。そのうちの10の私立大学で入学者が定員割れとなりました。本学は幸いにも1994(平成6)年以来30年間一度も定員割れすることなく順調に運営がなされてまいりました。これもこれまでの卒業生の各方面での活躍が評価されていることに加え、先生方の熱心な教育・学生支援に高い支持、評価を頂いているものと感謝しているところです。ただ、国の予測を上回るスピードで進む少子化とコロナ禍の落ち着きによる一極集中への回帰等、地方小規模大学の運営は益々厳しさを増してまいりました。さらに今、大学、学校法人には社会の厳しい目が向けられているのもご承知の通りです。スポーツ競技中における危険行為、理事長の脱税問題、学生の薬物使用問題等、組織のガバナンス不全、危機管理の甘さによる不祥事が大きな問題となっています。都会のマンモス大学の出来事で我々地方大学とは関係ないと傍観することなく、自らが襟をただし、危機管理を徹底し、学生をこれらの事件・事故から守ることが私たちの重要な使命です。これまでの30年を振り返り、これからの30年に向けて、皆さんが自慢できる母校であり続けることができるよう、教職員一体でこれからも、常に大学改革を進めてまいります。皆さんの健康と大いなる飛躍をお祈りしお祝いの言葉とします。とまど                9新潟国際情報大学 学報 国際・情報 令和6年4月発行 2024年度 No.1 学校法人 新潟平成学院理事長 佐々木 辰弥

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