好奇心と探究心忘れず日々努力自分自身の価値観つくろうさくそううごめしゅんじゅんと異なり、大学の講義にはどうしても価値の問題が入ってきます。たとえば「第二次世界大戦はなぜ起きたのか」という問題を考えるにしても、そこには多くの理由が考えられます。ヒトラーが悪かったのか、第一次世界大戦の戦勝国がドイツを賠償問題で追い込んだのが悪かったのか。他にも無限の要因があるでしょう。それらのなかで何を拾い、何を捨てるのか。何と何が相関関係で、そのなかの因果関係はどれか。何億、何十億という人が蠢いているなかで錯綜した事象が複合的に起きていくわけです。それらの連関は非常に複雑です。そうした事態を前にして自分自身はそれらの理由、原因として何を選びとるのかという問題です。これは歴史学者のE・H・カーが『歴史とは何か』という本のなかで「歴史の連関について考えることは価値判断のまだ寒さが残る中、少しずつ春の暖かさを感じる季節になりました。本日は私たち新入生のために、このよう問題である」と書いたとおりです。しかも勝手に選んで良いわけではなくて、説得力をもつものを指摘しなければならない。ですからそんなときにたとえば「第二次世界大戦はフリーメイソンの陰謀だった」みたいなことを言うのは恥ずかしいことです。誰かの陰謀で動くほど世の中は簡単ではありません。したがって陰謀論というのは問題の単純化どころか、思考の否定です。こうした問題は戦争のようなものでなくても、たとえば「明治ブルガリアヨーグルトはなぜ売れたのか」ということでも同じです。その理由は本当に複雑で、現象としては「売れたから売れた」という事実があな素晴らしい入学式を挙行していただき、誠にありがとうございます。また、数々の激励のお言葉や、私たちを支え、応援してくださった家族や周りの方々にも心より御礼を申し上げます。今年の1月1日、能登半島地震があり、悲しい出来事が起こりました。その被害の把握にインターネット技術やAIが活躍しました。しかし、一方で根拠のない、いわゆるデマ情報がSNSで飛び交い、混乱を引き起こしたり不安を拡大させたりしましるだけです。その原因を見つけようとするのは本当に大変ですし、さらにはそれらはすべてあとづけの論理です。そんなものが事前にわかるのであれば、世の中の乳製品メーカーのすべての製品は売れ続けるはずです。だからこそこうしたことについて考えるのは膨大な情報を自分の価値で取捨選択していくことでもあります。以上のように世界で起きている現象について大学で考えることは、自分自身の価値にもとづいて説得力のある議論を進めていくということです。もちろんそれらは本当に大変な作業です。途方にくれるかもしれません。しかし大学という空間にいる人間、つまり教員たちはそのような作業を自た。これらのことから、情報技術は有用性とともに危険性をはらんでいると考えます。これから時代を担う私たちは膨大な情報の中から正しい情報を的確に検索できる能力を持つことが重要であると感じました。また、chatGPTの出現で生成AIも私たちの生活に大きな影響を与える可能性があると思っています。これからの情報技術の進歩や昨今のような社会の変化が目まぐるしい時代にだからこそ、私は日々謙虚に勉強し続けて、知識や技術をしっかりと身につけたいと考えました。そして、分なりに続けてきた人間です。進まない研究にうんざりしつつ、失意と逡巡のなかでなんとか研究を進めているのです。専門はいろいろですが、それぞれが自分の価値をもとにして学問として説得力のあることを言い続けてきたのです。みなさんは来週からそうした教員の授業身の価値観をつくっていってください。それが大げさにいえばみずからの価値を洗練するということです。そしてそのような価値の洗練という作業をしているうちに自分がすべきことがだんだんわかってくるはずです。自分の将来に関して心配する必要はありません。4年後の皆さんの姿を楽しみにしています。将来はこれからこの大学で学ぶ多くのことを活かして、社会に貢献したいと思っています。そのために、大学生活や課外活動などにも積極的に取り組み、多くの人と関わり、人間として成長していきたいです。この新潟国際情報大学で過ごす4年間を心と探究心を忘れず、日々成長し続けることを誓い、新入生代表の抱負とさせていただきます。を受けることになります。四年間、彼ら/彼女らの研究成果をもとにした授業に触れることによって自分自有意義なものとするために、知的好奇私の抱負新潟国際情報大学 学報 国際・情報 令和6年4月発行 2024年度 No.1 3 新入生代表 経営学科山田 美也子 多くの人たちの命や生活が奪われるという
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