06講義番号B-07講義番号B-08講義番号B-09講義番号B-10「夢を売る者たちの世界大戦:第二次大戦期アメリカのアニメーション作品とクリエイターの戦争協力」講義では、20世紀アメリカ合衆国のアニメーション文化とその戦争協力の問題を取り上げます。アニメ作品は子どもの娯楽…一般的にはそのように認知されています。でも本質は真逆です。アニメーションとは感情を揺さぶる視覚技術であり、それゆえに誰よりも大人たちの心に突き刺さるのです。この感情操作の効用を20世紀の近代国家は逃しませんでした。そのもっとも重要な活用事例が戦争遂行のためのアニメーション作品群です。アニメを視覚芸術まで高めた20世紀前半のアメリカ合衆国を事例に、社会と文化の問題を考えていきます。「『敵』の顔を描く:第二次大戦期アメリカのアニメーション作品に登場する『敵国人』」20世紀の戦争で外国の「人間」を自国の「敵」と教え込む最良の方法は、映像作品の上映でした。「敵」の脅威について映像と音声を駆使して説得するコンテンツを制作し、善良な人びとを映画館に閉じ込めて見させることで、不思議なことに世論はみるみる変わっていく……近代国家は映像の悪魔的効果に驚愕し、積極的に利用していきます。もちろん、その最上のコンテンツにアニメーション作品も含まれました。人気アニメ作品に描かれた「敵国人」の姿を考えていきましょう。「ミッキーはキスをせがまない:アメリカにおける映像表現の規制とアニメーション・キャラクターの変化」アメリカ合衆国のアニメーション文化が隆盛した1930年代には、現在でも人気のキャラクターが登場するたくさんの作品が誕生し、人びとを楽しませました。しかし、このアニメ文化の隆盛期は、アメリカ社会が保守化し、人びとに「悪影響」を及ぼす映像作品に自主規制を強いた時代でもありました。映像媒体であるアニメーションも規制の影響下に入り、作品の世界観や登場するキャラクターたちの容姿や性格が変化していきました。社会にとって「悪影響」な映像表現とは何であったのか? 社会と創作文化の関係性について考えてみましょう。「腹黒い笑いの世界:人種差別の視覚的表現の系譜」アメリカ合衆国には現在も深刻な人種差別が社会に根付いています。これまでのアメリカの社会文化にどのように人種差別が表現されてきたのかを知ることは、現代の私たちが差別意識に抗うための大きな手助けになります。この講義では、風刺画や商業イラストレーション、コミックやアニメーション作品といった視覚媒体に描かれてきた黒人(アフリカ系アメリカ人)たちの姿について論じていきます。「黒人とニワトリ(フライドチキン)」や「黒人とスイカ」などアメリカ社会独特の差別表現など、知られざる腹黒い笑いの歴史を知りましょう。鈴木 俊弘(SUZUKI Toshihiro)国際学部 准教授経 歴:2021年 一橋大学大学院社会学研究科 博士後期課程単位取得満期退学専門領域:アメリカ移民史研究、人種論研究、文化表象研究
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