<政治学>講義ノート 2024-3-5

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3-5 シンボルとイデオロギー

3-5-1 シンボル

象徴 symbol(記号 sign )

本来関係のない具体的、感覚的意味によって、特定の抽象的意味を指示、類比すること
 :自然的、伝統的、多義的、歴史的

具体的意味:概念、身ぶり、記号抽象的意味:観念、事物
 鳩 平和
 太陽 王:隠喩的 メタファー
 王冠 王:換喩的 容器、標識など

シンボルの特徴
・シンボルは具体的な内容を持たない
・シンボルは概念作用をともなう
 cf.記号は具体的な指示内容を持つ
・動物はサインをもつが、人間はシンボルも持つ cf.カッシーラー

シンボルの歴史性
・意識的、無意識的に体系をなして人類に伝えられている
・シンボルの膨大な体系
・20世紀に入ってからの研究

精神の創造的産出能力
・言語だけでなく、神話、芸術、宗教などの「シンボル形式」
 cf.カッシーラー『シンボル形式の哲学』全3巻、岩波文庫
・模写ではなく独創的に像を作る cf.ランガー、ルフェーブル
・時間、空間を超えたカテゴリーにおける共通のシンボル形式の共有
  それが人類における自然についての共通の認識:近代自然科学
  cf.カント(岩崎武雄『カントからヘーゲルへ』東京大学出版会)

「多様なシンボル」の研究
・天、地、太陽、月、水(エリアーデ)
・夢の持つ象徴性(フロイト)
・子供の遊び(ピアジェ)
・無文字社会の神話の構造とシンボル(レヴィ=ストロース、リクール)
・モード(バルト)

シンボルのプロセス(1-4)
1.抽象化による意思伝達
  コップ、ガラスビン、卍、十字架
  抽象的世界の構築
   それによって具体的事物を整理する
2.表現による自己解放
  日常生活の中の抑圧からの解放
  芸術、宗教
  生きがいとアイデンティティ(自己同一性、存在証明)
  シンボルの個人による差異
3.シンボルの解釈、変化、固定化
  制度化、固定化するシンボル
  発生時のシンボル→謎
  誤解の連続
4.自己解放であると同時に抑圧の契機でもある

政治社会におけるシンボルの意味
・人間は物理的強制力だけではなく、精神に対する働きかけによっても支配される
・高度に発達した社会生活における相互の意志疎通、連帯と同時
・支配の隠蔽
  象徴の支配、象徴による支配
  「神聖な一致」リップマン
  「政治的神話」カッシーラー
  シンボルによる政治社会への同一化
  1.価値・感情の共有化、組織化
  2.認識の組織化

政治社会の変化
「伝統」の消滅
  ↓
国民国家というシンボル

政治社会におけるシンボルの体系を支える「下部構造」の分析
 マルクス「観念が人民をとらえたとき、それは社会的力となる」
 イデオロギーの問題

3-5-2 イデオロギー
イデオロギー ideology 社会的意識、観念形態、虚偽意識

(前提)
 上部構造と下部構造(土台)の関係
  superstructure substructure cf.infrastructure(社会的生産基盤)
 下部構造 経済構造
  一定の発展段階にある生産力に対応した生産関係の総体からなる経済的構造

マルクス主義におけるイデオロギー
 cf.マルクス『ドイツ・イデオロギー』新日本出版社、合同出版
1.上部構造そのもの:政治制度、法体系、家族制度、宗教、道徳、哲学、芸術
2.その上部構造を維持する信念体系

(基本的考え方)
合理性の表現である理念(イデー)が個人的視点に基づく世界観とみなされ、政治的利害の表現であるとされる

ヨーロッパ近代における「公共」というシンボルによる社会の再編
イデオロギー理論の両義性の必然性の発生
 1.社会の理解のための道具
 2.現実的利害の暴露

思想体系、観念体系は支配階級の利害にもとづいて、現存の支配体制の正当化として意識的・無意識的に機能する場合
 ↓
虚偽意識としてのイデオロギーの暴露
公共性の解体
マルクスによるイデオロギー批判:プロレタリアートの科学的認識の絶対視
政治とシンボルの関係の人類史的変化

イデオロギーによる組織化
・イデオロギー対立
・政治的シンボルの操作
・イデオロギー=それぞれの時代状況の中で組織化された政治的シンボルの体系

プロレタリアートの認識
・マルクスの「イデオロギー批判」のイデオロギー性の批判
・プロレタリアートもイデオロギー性を帯びる

存在<被>拘束性
<自己も含む>あらゆる思想の存在拘束性の承認
イデオロギーとユートピアの対立
マンハイム『イデオロギーとユートピア』未来社、『世界の名著68』中央公論
・知識社会学「自由に浮動する知識人」
・実証主義や現象学の反歴史性に抵抗
・変動期社会における歴史の意味
 1.「自由に浮動する知識人」というテーゼの問題
 2. 20世紀的テクノクラシー:technocracy 技術者による社会管理
  ダニエル・ベル『イデオロギーの終焉』1960

自由集団民主主義
そのような状況によるイデオロギーの拡散
その結果:「すべてはイデオロギー」

「真の」イデオロギーへの渇望の発生
・イデオロギーを喪失した(と信じる)大衆の突発的な運動
・「真理」を信じる少数者の突発的な運動、直接行動

シンボルのなかでしか生きていけない
・シンボルの選択
・具体的状況におけるシンボル選択の価値、意味を知る
  どのような人間的価値の選択か
  それを知る意欲、知性、柔軟性(イデオロギーの自己認識)
  「現代日本における大学生として何を選択しているのか」


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新潟国際情報大学 国際学部 越智敏夫
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